レギュレータとレクチファイア

二輪車に使用されているレギュレータとレクチファイアの違いはご存知でしょうか?

失礼な事を言う様ですが、(*1)自動車関連のプロの方でも電装関係に詳しい方は少ないようですね。
その為か、四輪業界では「電装屋」さんと云う電気専門の業種が存在します。

その様な現状では、自分のマシンを整備、改良する場合、プロに聞いても判らない事が沢山あります。
そこで、少しでもサンデーメカニックの方の役に立てればと思います。


さて、レギュレータとレクチファイアについてですが、自動車の発電機についても簡単に説明しておかなくてはなりません。

一般的に四輪車の発電機は、ステータ(固定)コイルとロータ(回転)コイルから成り、ロータコイルにバッテリーから電力(*2)を供給し回転する電磁石を作り、ステータコイルに起電力を発生させます。
発電機にはバッテリーから供給する以上の回転エネルギーが加えられているので、回転数に応じ供給した電力以上の起電力が発生します。

二輪車の多くは、それと異なり、ステータコイルとロータマグネットから成り、回転する永久磁石によりステータコイルに起電力を発生します。

四輪車の発電機:
内側の回転コイルにバッテリーからの電力を供給します。
二輪車の発電機:
この図はインナロータタイプです。コイルの外側で磁石が回るアウタロータタイプが一般的です。

何れの方法でも、コイルに磁石の N と S を交互に入れ替えるので交流電力が発生します。
これを、利用しやすい直流(脈流)に変更するのがレクチファイアです。
レクチファイアには、電圧や電流を制御する機能はありません。

交流出力 レクチファイア 直流(脈流)


また、回転エネルギーが電力に変換されるのですが、二輪でも四輪でもエンジン回転数は一定ではありません。

発電する電力は、回転数に比例して大きくなりますが、消費する電力はそれに関わらず使用状況に応じて変動します。
例えば、エンジン回転数がどうであろうと、暗ければライトを点けるし、曲がる時はウィンカを点けます。 また、ライトやウィンカを消していても、スピードを上げれば回転数は上がり発電量は増えます。

そこで問題となるのが余った電力です。

四輪車の発電機では、電力が供給過剰となり、出力電圧が有る一定電圧(概ね13.8V)を超えると、レギュレータが出力が13.8Vと成るように、ロータコイルに供給する電力を調整します。
使用する電力に見合った電力(*3)を発電するのです。

それに対して、二輪車は永久磁石を回転させているので、その様な調整が出来ず、いつも能力いっぱいの発電をしています。
これに、一定抵抗値の負荷(電球)を接続していると、回転数が高くなり発電する起電力が大きくなった時、高電圧、大電流がながれ、電球は切れてしまいます。
その場合、ひとつ切れると、また消費量が減り、連鎖的に全てが切れていきます。

それでは、どうやって二輪車の発電機の発電電力を制御すれば良いのでしょう?
実は二輪車の場合、発電量を変える事は出来ないので、使い切れない余った電力を(*4)レギュレータが代わって消費してくれるのです。
消費した電力はレギュレータで熱に変換されます。

そうです、疑問に思った方も居ると思いますが、四輪車と二輪車では、同じレギュレータと言う名前でどちらも発電機の出力をコントロールする役目をしていますが、働き方が全く異なるのです。

この辺の事が判ると、二輪車では「レギュレータの大幅な改善をするとエンジン出力が上がる」と云うエレクトロニクスチューンが出来ると理解できるのですが、それについては機会が有ったら説明したいと思います。(*5)

ここまでの説明で、レギュレータは自動車の電気系統には必要不可欠な部品であると判って頂けたと思いますが、それでは何故「ちゃんと点滅」や「バッテリーレス化の注意点」の解説に「レギュレータの無い車両」などと書いてあるのでしょうか?

実はレギュレータが無い車両は存在するのです。
正確にはかつて存在したのです。
レギュレータは半導体電子部品(トランジスタ等)で作られていますが、昔は電子部品が高価で車両価格が高くなる事を避ける為に使われない事が多々ありました。

しかし、「昔のバイクはスピードを出すと電球が切れる」などとは聞いた事は有りませんよね。

これは、発電機で発電した電力をレクチファイアで整流してプラスとマイナスに分けて「バッテリー」に繋ぐと、あら不思議、バッテリーの表示電圧以上に電圧が上がらなくなるのです。

これは、バッテリー(電池)の端子間電圧が一定である性質をレギュレータの代わりに利用していたからなのです。
余った電力はバッテリーの充電に利用され、そこで消費されるのです。

ところが、バッテリーの性質はそれだけでは有りません、100%充電でも電力消費が出来るのです。
バッテリーにはあまり良くないですが、電気が一杯になっても充電を続けると、普通タイプの自動車用バッテリーは電解液(バッテリー液)の電気分解をして水素と酸素を作ることと内部抵抗で電力を消費します。

ここで、ヒントが出てきました。
「レギュレータの無い車両にメンテナンスフリー(密閉バッテリ)は接続できない」
と云う事です。
電力が余ると、バッテリー液を水素と酸素に分解するのですから、発生した大量のガスが処理しきれず密閉バッテリーでは「破裂」してしまいます。
また、密閉でなくても、ガスに変わって減ってしまったバッテリー液の補充が出来なくてはなりません。

また、
「レギュレータの無い車両では、バッテリーの液不足や劣化をすると電圧制御が出来ない」
「レギュレータの無い車両では、新たにレギュレータを装着しなくてはバッテリーレスに出来ない」
と云う事も解ります。
バッテリーがレギュレータの代わりになっていると云う事はバッテリーを外したり、劣化すると、エンジンが高回転時に発生する大きな電力が消費できず、高電圧、大電流が流れ、電装部品を壊してしまうのです。

仮にアイドリングが1700回転/min で10V 50Wの電力が発生する発電機の場合、消費電流が同じであれば、レッドゾーン10000回転/min となった時に58V 294Wの電力が発生します。

もう一つ、二輪のサンデーメカニックの間では、バッテリーレスにする為に、コンデンサを利用する事が良く言われていますが、ここでも注意が必要です。
コンデンサとバッテリー(電池)は、全く違うしくみで有ると云う事です。(*6)

その為、
「レギュレータの無い車両でバッテリーの代わりにコンデンサを接続しても電圧の制御は出来ないし、最悪はコンデンサが破裂する」
と云う事がわかります。

もし、レギュレータの無い車両で問題無くバッテリーレスに出来たと云う話があれば、それは発電機の能力の限界と消費電力の危ういバランスにのっているに過ぎず、いずれ、コイル焼損などのトラブルとなる可能性を秘めている事になります。

 

ウンザリとするほど長い文になってしまいましたが、役に立ったでしょうか?
なるべく簡単に解るように書いたつもりですが如何でしたか?
それでも、初心者には解り難かったかもしれません。
(文章が下手だから?)
もっと詳しく知りたい事があれば、返信は遅いかもしれませんが、どうぞ掲示板で質問してください。


*1 ここで、自動車とは、四輪、二輪を含む全てのエンジン付き車両を云います。
*2 《電力(W)=電圧(V)×電流(A)》 電気の大きさを表す単位の一つ。
川の流れに例えれば、電圧は川の流れる勢い(速さ)、電流は川の広さ(流れの太さ)、電力は流れる水の量になります。《流れの速さと太さが判れば、量が計算できます》
*3 回転数が同じでも、回転コイルに流す電力を小さくすると発電する電力もそれに比例して小さくなります。
これも川の流れで例えれば、ダムを作って流れを利用する時、使い切れない水が多いとダムが溢れ決壊しますが、四輪車のレギュレータは、ダムに流れ込む水の量をコントロールするのです。
雨の降る量を減らしたり増やしたりするのです。
*4 こちらは、ダムに流れ込む水の量は変えられないので、使う量を流れ込む水に合わせて増減してあげるのです。余った水は有効に使わずに海に直接捨ててしまうのです。
*5 エンジンの力を使って大元の水を流しているのですから、せっかく作った水の流れを捨てると云う事は、エンジンの力を無駄に使っていることになります。
電池 ここで云う電池とは、ケミカル(化学)電池を指します。電解液中にある二種類の電極のイオン化傾向の差で起る化学反応で発生するエネルギーを電力として取り出します。
充電できない「一次電池」と充電できる「二次電池」があり、一般的な自動車用バッテリーは二次電池です。
*6 二次電池と同じ様に電気を蓄える事のできる電子部品に「コンデンサー」が有りますが、静電気として電気を蓄える為、性質が全く異なります。
こちらは本文で説明した様な、端子間電圧を一定に保つような性質はありませんし、指定電圧を超えると燃え出したり、破裂したりします。(電気二重層コンデンサのように静電気以外の方法で電気を蓄える種類も存在しますがそれらは厳密にはコンデンサとは異なります)
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